八橋
いにしえの昔、川で子供二人を失った母が無量寿寺の尼となり、やがてお告げを受け八橋をかけた。
川のほとりに咲くカキツバタを亡き子の供養の花としたという。
時を経て、東国に下った在原業平は、この八橋に咲くカキツバタを見て、京に妻を置き旅する心を歌にしたという。
から衣
来つつなれにし
妻しあれば
はるばる来ぬる
旅をしぞ思ふ
伊勢物語/古今和歌集
また、在原業平の恋人「杜若姫」は、京の都からあとを追いこの八橋に辿り着くも、彼はすでにこの地を去っていた。悲観にくれ入水し命を絶ったという。
深い紫色に白筋をまとうカキツバタの花を眺めていると一筋の涙のようにも見え、モノノアハレなり。