キヤノン写真新世紀2010応募作品(落選)
「ただ今、」
この2年間、毎週末ずっと同じ都市を彷徨いながら、写真を撮り歩いてきた。 地面にできるだけ近い場所で、生き物の心意気を感じながら。 一つ気づいたことがある。己の心身は、様々な物事に囚われの身になっていたこと。 暗いのトンネルを突破して、光のある方へ向けばいいのだ。 これは、その質素な心の旅の記録。
2010年3月、山谷界隈でスナップを撮っていた際に仙人のような方と出会った。
高齢の生活保護者と何ら変わらないツッカケを履いた姿に身を隠しながら、森羅万象を知るかのような知性と博識を持ち、日本とはどのように成り立っているのか、山谷や下町以外に撮るべきものは何なのか、気付かせてくれた。
この日から、日本の底辺かつ縮図である下町をひたすら歩く地道な自分探しの旅に、ひと区切りを付けることとなった。